綱領・基本姿勢・運動方針

綱 領

昭和59年2月26日、全日本教職員連盟は結成されました。
われわれは教育専門職としての使命を自覚し、中正不偏の教育実践を通して、国民の信頼に応えるとともに、自由で民主的な社会を創造する教職員団体、「『美しい日本人の心を育てる』 教職員団体」 の創造を目指し、全日教連の旗のもとに結集したのでした。
結成は一朝一夕に実現できたのではありません。57年・58年の2カ年間、それぞれの諸機関における審議、代表者による討議を重ねること80数回、大同団結の目標・方向・規約、事務局・日本教育文化研究所・全日教連共済会の運営の在り方等の検討を重ねた結果、結実したのです。

討議の冒頭に取り掛かった審議項目が全日教連綱領でした。
綱領とは、団体の運動の主張であり、基本方針だからです。

全日教連の綱領は5つの柱で成っており、この綱領のもと、すべての活動が展開されなければなりません。全日教連に結集する加盟団体は、それぞれ組織の形態・活動内容・方法が異なっていても、根本である綱領を支持し、日々活動しているのですから、そのねらいを理解し、遵守することが大切です。

1. われわれは、自由で民主的な社会をつくり、世界の平和と文化国家の発展に貢献する。

これは、日本国憲法及び教育基本法の精神に立脚しており、教職員団体の活動を通して、具現化しようとする 「目指す教育の理想」 を宣言したものです。このことは、子供の人格の完成とともに教育的努力の究極的目標でもあります。

平和的な国家及び社会の形成者としての国民の育成を目指すためには、伝統・文化を尊重し、公共の精神を踏まえた上で正しい国家意識の涵養、国際理解と協調、国民としての社会的自覚等の育成が不可欠となります。このためには、子供の人間性豊かでしかも自主的・自発的な成長に期待しつつ、基礎・基本を身に付け時代や社会の変化に対応できる子供に育てることを基本に据え、「目指す教育の理想」 に向かって活動を展開する必要があります。
憲法の前文でいう「われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたって自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によって再び戦争の惨禍が起ることのないよう」 われわれは国民としてまた教職員として名誉をかけ全力を挙げてこの崇高な理想を追求し目的の達成を願うものです。

2. われわれは、教育専門職としての使命を自覚し、健全な青少年の育成に努める。

教職は社会的信頼と尊敬を受けるべき専門職であるという自覚に立ち、自ら向上心と不断の努力によって資質を高め、子供の心身の成長の手助けとなる指導力の向上と、より高い職務の遂行を目指し、国民の負託に応える教育を確立しなければなりません。
教育専門職として国民から認められるには、知識・技能にとどまらず教師自身の人格、徳性に根ざす教育の権威の確立が必要であり、全日教連は専門職の自主的な職業集団としてその確立に努力し、国民の期待に応える教育を目指しています。
教職員に対して国民が望む資質としては、児童生徒に対する教育的愛情、広く豊かな教養と人間性、教育者としての使命感、教育の理念や人間の成長発達についての深い理解、教科に関する専門的知識、そしてそれらの上に立つ実践的な指導力と児童生徒との心のふれあいなどを挙げることができます。
このことを踏まえて、われわれは教育の立場から専門職を次のように捉えます。

  • 教育愛を基本に、人格の完成を目的とする職業
  • 教育に関する深い知識・識見を必要とする職業
  • 社会に対する重い責任を持ち、公共に奉仕し社会の発展に尽くす職業

3. われわれは、社会的責任を自覚し、国民の支持のもとに中正不偏の教育を推進する。

教育は国の重要課題であり、国家の発展ないし個人の福祉は教育の力に待つべきものです。それを支えるわれわれ教育に携わる者としての社会的責任は重いものがあります。しかし、一部の教職員団体は特定イデオロギーや特定政党支持のもとに政治的闘争や教育内容への不当な介入などを行っているため、教育界に「不信と対立」を生じさせ、我が国の学校教育がその社会的使命を十分に果たし得ず、保護者と社会の信頼を失わせています。われわれはこれに反対し中正不偏の教育を堅持することによって、国民の負託に応えます。
われわれは法治国家の一員としての自覚に立ち中正不偏の教育を推進するため、次の行為を行いません。

  • 特定のイデオロギーを教育現場に持ち込むこと。
  • 特定のイデオロギーによる教育内容への介入やイデオロギー教育を行うこと。
  • 特定な政党を支持すること。または特定政党に反対するための政治教育その他の政治的活動。
  • 政治的闘争。
  • 違法な行為。

ただし、全日教連の活動を支持する政党とのかかわりは保持します。

4. われわれは、教職員の社会的・経済的地位と資質の向上に努める。

教育は国民にとって最も関心の深い事柄の一つであり、国民が強く期待しているところです
学校がその責務を果たしていく上で、教職員の役割は大きく、その成果は教職員の力量に待つものです。このことを自覚し、不断の努力によって 「資質の向上」 を図り、国民の期待に応えていくことが社会的地位の向上、つまり社会的信頼と尊敬を受けることができるのです。 さらに教職員が能力を十分に発揮し、学校教育の成果をあげるためには、教職員の資質向上だけではなく、「教職員の給与・勤務条件の改善」 などが必要です。
このことから、われわれは安んじて職務に専念でき、しかも教育専門職にふさわしい生活保障を得るために、給与・勤務時間、その他の勤務条件、福利・厚生等の維持・改善を目指して積極的に活動を展開します。

5. われわれは、主体性を尊重し、同志の結集を図る。

全日教連は、単位団体の主体性を尊重しながら、理想の実現と目的の達成のために同志として団結する必要があります。
主体性とは、単位団体そのものの主体性を指し、「全日教連綱領」 の範囲内で認められるべきです。
組織の主体性には二つの意味があります。一つは、組織の結集という視点から、単位団体そのものが他の組織に加盟ないし連携協力関係にある場合、全日教連綱領に反しない限りそのことが尊重され、単位団体の活動を妨げないということです。この背景には、全日教連結成に当たり単位団体のそれぞれの実情や過去の経緯等に配慮したうえで大同団結したことがあり、現在もこの考えが引き継がれています。
もう一つは、全日教連の活動は多数決の原理による決定が最優先されるべきですが、個々の内容によっては単位団体の実情・実態・利害に必ずしもなじまないものもあるので、連携や協調しにくい面がでてきます。そのことについては個々の単位団体の意志決定や判断をある程度尊重するという意味です。このことは一方的な上意下達に歯止めをかけることになりますが、その反面、全日教連と単位団体または単位団体相互の信頼に悪影響を与えることもあり得ます。組織の決定に対しては、連携や協調を基本に信義と友愛の精神に立脚して同志の結集が図られるべきものと考えます。

基本姿勢

  1. わたくしたちは、教育環境の整備改善、教職員の地位並びに資質の向上に努めます。
  2. わたくしたちは、議会制民主主義を尊重し、法秩序を守りながら自由にして民主的な社会をつくります。
  3. わたくしたちは、教育の中正と政治的中立を堅持し、いかなる支配干渉をも排除します。
  4. わたくしたちは、教育実践を通し、教育問題に対する積極的な提言活動をすすめ、教育文化の形成に努めます。
  5. わたくしたちは、社会的責任を自覚し、国民世論の支持のもとに諸活動を推進します。
  6. わたくしたちは、教職員独自の連合体として活動します。各単位団体の主体性を尊重しあいながら、綱領・規約に反しない範囲の活動をすすめます。
  7. わたくしたちは、目的達成を目指し、連帯と協調を基盤として互助の精神に則り、諸活動を展開します。

4つの運動方針

国民の負託に応える教育の確立

1. 質の高い教育を提供する研修の充実

私たちは、常に自己の向上を目指し、高度な専門性、豊かな人間性や社会性等、教職員としての資質・能力を高めるための研修の機会を提供します。そして、総合的な人間力を備えた教育専門職として、子供たちが学ぶことの良さや意味を実感できる「質の高い教育」を追究します。

2. 活力ある教育環境の整備

様々な教育諸課題に対して、教育専門職としてその能力を十分に発揮し、教育効果を上げるためには、安んじて職務に専念できる環境が必要です。そのため、私たちは、学校現場の現状を国に伝え、教育専門職にふさわしい給与・待遇の改善、並びに勤務条件の整備を求めていきます

3. 児童生徒を取り巻く環境の改善

未来の日本を担う人材を育成するために、教育が果たす役割は大きいと言えます。教育は、学校・地域・家庭がそれぞれの役割を明確にし、連携を図ることが大切です。子供たちのためによりよい教育が進められるよう、社会体制を整備するとともに、地域や家庭における教育の充実を図るための取組を進めます。

4. 組織の強化・拡大

私たちは日本の教育の正常な発展と教職員の資質・能力の向上を目指す団体であることを全国の教職員に働きかけ、組織の強化・拡大に努めます。また、「美しい日本人の心を育てる」という全日教連の理念を広く国民に浸透させるための活動を、積極的に展開していきます。